えびのらくがき

とある理系会社員の気晴らし備忘録

クラインの壺(岡嶋二人)読んでみた。

会社の同僚から岡嶋二人の『クラインの壺』と言うミステリー小説が面白いと聞き、読んでみました。

クラインの壺って数学っぽくていいなと理系人間として直感し、その時は作者のことを名前すらも知らなかったのですが、タイトルだけで興味が湧きました。

 

読了の感想。非常に面白かった。

 

そして、今でこそありふれたものに感じられますが、現実と区別のつかないVRの世界に入ってしまうという設定を、まともにPCも普及していない約30年前に考案することができた作者に感心しました。

 

総ページ数400程と若干多めではありますが、文体は易しく、会話文が多めなので、すらすらと読み進めることができます。

 

あらすじ

主人公の彰彦は新型ゲーム機K2、通称『クラインの壺』のゲームシナリオ原作者として開発現場に招かれ、モニターの梨紗と共に試験プレイを実施する。クラインの壺は今でいうPS-VRの全身バージョンのようなものであり、特殊なスポンジ状装置に身を委ねることによって、仮想世界に入り込み五感全てのVRを体験することができる。その仮想世界は現実世界と区別がつかないほど精巧に作られており、最終的に彰彦は自分自身が今いる世界が、仮想世界か現実世界がわからなくなってしまい自殺を決意する。

 

感想

とにかく設定が秀逸。

さらに、機器の詳細や動作説明などもところどころ織り交ぜてストーリーが進み、これって将来実現可能なのでは??という妙なリアリティもあって、すぐに小説の世界観に引き込まれました。

また、クラインの壺は単純な新型ゲームでは無く、裏に大きな組織を抱える、人間操作のための陰謀説のようなものを見え隠れさせる辺りも面白かった。

 

彰彦の最期について

最終的に彰彦がどちらの世界で結末を迎えたかについては説明がありませんでしたが、私個人の考察としては、現実世界であろうと思います。

ストーリー終盤で貴美子は、梨紗の死を含めて途中からはゲーム内での6日間ぶっ続けの出来事であると説明しましたが、これはおそらく壺内だと思います。彼女の説明が正しいとすると百瀬の『戻れ』という警告によってゲーム中断が起こる現象が、現実世界と仮想世界の両方に現れていることが説明しづらくなるからです(これすらもクラインの壺が再現していることは否定できないが。)。

しかしその後、別荘で自殺を決意するシーンの前には空白があり、そこでゲームは離脱、現実世界で自殺を図っていると考えるのが物語として自然ではないかと考えます。

  

ドラマバージョン

読了後、クラインの壺について調べてみるとNHKでドラマ化されていることを知り、二日で一気に全10話を鑑賞してしまいました。視聴者層を意識してか、ストーリーに修正が加えられていて、彰彦は中学生。梨紗は彰彦の家庭教師でシナリオ原作者、という設定となっていました。

映像や役者さんの言葉遣いの古さが、なんとも言えず懐かしいような、恥ずかしいような感じで、これはこれで楽しめました。 

クラインの壷 (新潮文庫)

クラインの壷 (新潮文庫)